記事の要約
道路交通法第二十七条第2項の2文目「(車両は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、)最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする(できる限り道路の左側端に寄つてこれに進路を譲らなければならない)。」の義務が、速度超過の車両に追いつかれても生じるかを調べてみました。
道路交通法第二十七条第2項の2文目に対し、速度超過の車両に追いつかれた場合には義務なしとする説が有力であり、義務ありとする文献は改正前の道路交通法の解説であった*1。
横井大三ら(本・義務あり…ただし改正前の道路交通法に対する解説)
宮崎清文(本・義務なし…ただし改正前の道路交通法に対する解説)
道路交通執務研究会(本・改正前の道路交通法に対する横井大三らを引用)
浅野信二郎(本・一次的には義務なし)
橋本裕藏(本・義務なし)
警察庁(運転免許技能試験)(Webページ・義務なし))
弁護士ドットコム(Webページ・義務なし)
ロードバイクが欲しい!初心者向けナビ(Webページ・義務なし)
happeebrthdae(Webページ・速度による)
乗りものニュース(Webページ・義務なし)2023年7月に追記
ベストカー(Webページ・義務あり)2023年7月に追記
主観の要約
義務なしと捉える方が有力だと感じました。とはいえ「有力」や「典型的な例では義務はないだろう」であり、正解を決めるには、判例を待つべきだと思いました。
背景or前提(車両通行帯が設けられている場合)
要約:車両通行帯が設けられている場合、進路を譲る義務はない。
高速道路での追い越し車線の話であっても他の車両に追いつかれた車両の義務を持ち出す人がいます。「車線」は道路交通法の「車両通行帯」と必ずしも一致しませんが、追い越し車線がある道路のほとんどは「車両通行帯の設けられた道路」でしょう。
道路交通法第二十七条第2項は下記です*2。
第二十七条
2 車両は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、最高速度が高い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、できる限り道路の左側端に寄つてこれに進路を譲らなければならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000105
特に第2項は複数の文から構成されており、文の構造からして、下記の太字部分が同じになるよう補完するのが自然でしょう。
- 車両は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、最高速度が高い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、できる限り道路の左側端に寄つてこれに進路を譲らなければならない。
- 車両は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。
進路を譲る義務は車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除きと書かれています*3。
例えば下記の@UMR_PhDのツイートは間違っています。
RTといっているのは直前にリツイートしている、下記の@Harus_Nicusのツイートでしょう*4。
これに関しては、@UMR_PhDも下記のように「なるほど……確かにそっちは単純な話でしたね(後で追い越し車線の法的な位置付けを調べなくては)」と、納得したようです。
以上により、車両通行帯が設けられている場合については義務なしと解釈が一致している*5ので、ここからは車両通行帯が設けられていない場合だと仮定します。
速度超過している車両に追いつかれた車両の義務
要約:道路交通法第二十七条には書かれていないが、多くの資料で義務はないとされている。
道路交通法第二十七条第2項付近の解説を引用しつつ、懸念点などを書きます。
1961年 『註釈道路交通法』(有斐閣)横井大三ら
「双方の車両の現実の速度の如何を問わず、後順位の車両は、進路を譲らなければならないことになる。」
第二十七条の改正前の文献であり、現行の条文と照らし合わせる解釈には注意が必要。
1961年 『条解道路交通法』(立花書房)宮崎清文
「前車は、その追いついた車両の現実の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとする場合においてはじめて、進路を譲る義務が生ずることになるわけである。」
引き続き進行しない場合には義務が生じないが、引き続き進行した場合に義務が生じるかは怪しい書き方*6。第二十七条の改正前の文献。
(1964年 ジュネーブ条約加入関連で道路交通法改正。)
1966年 『注解道路交通法』(立花書房)宮崎清文
「追いついた車両が法定の最高速度をこえる速度で違法に走行していたとしてもなお追いつかれた車両に加速してはならない義務が生ずるかどうかという点については、若干の疑問はあるが、法の趣旨からみて消極に解すべきであろう。」
二十七条第1項の解説である*7。
1966年 『体系新交通読本』(警察時報社)
「高速の車両が低速の車両のためその進路をふさがれることにより交通の円滑を阻害される結果となることを防止するため設けられた規定である」
速度超過は明示せず、ただ交通の円滑を強調*8。
1967年 『註釈道路交通法 再訂版』(有斐閣)横井大三ら
「双方の車両の現実の速度の如何を問わず、後順位の車両は、進路を譲らなければならないことになる。」
道路交通法改正前の1961年と一字一句同じ。
1972年 『道路交通法とその運用』(技術書院)浅野信二郎
「同一方向に進行する車両の間に速度差があるときは、追越しまたは追抜きが行なわれる。この場合、危険を生じさせないようにする義務が一次的*9に追越しまたは追抜きをする車両の側にあることはいうまでもないが」続いて「追越しまたは追抜きをされる側についても、これらの行為が安全に行われるようにするための義務を課すことが交通の安全と円滑を図るため必要である」
速度超過の場合には一次的に後方車両(追いついた側)に義務が発生しそう*10な書き方。
2008年 『道路交通法の解説 十二訂版』(一橋出版)橋本裕藏(初版は1989年)
「本条は、連続して進行する車両のうち後続車両が制限速度以内で進行していて、先行車両に接近した場合の先行車両の義務を規定しています。」と速度超過について明確な記述がある*11。
2014年 別冊判例タイムズ38(判例タイムズ社)東京地裁民事交通訴訟研究会
「適法な追越しを前提とする法27条の被追越車の避譲義務」二重追越しについての解説であるが、第二十七条全体を指している。追いつかれた車両の話は「追越し」ではないが、同様に適法な後方車両を前提としそうである。
2022年 18-2訂版 執務資料 道路交通法解説(東京法令出版)道路交通執務研究会
「進路を譲る義務は双方の車両の現実の速度の如何を問わず、後順位の車両は、進路を譲らなければならないことになる。したがって、同順位又は後順位の車両に追いつかれた場合は、その追いついた車両の速度をこえる速度で進行すれば、後車に進路を譲る義務は生じない。後車の現実の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとする場合に、初めて進路を譲る義務が生ずる」
第2項1文目の解説。また、出典は1961年(またはその再訂版)の文章であり、現行の条文と照らし合わせる解釈には注意が必要。
また、二十七条の解説として、「追いついた車両が法定の最高速度を超える速度で違法に走行していたとしても、なお追いつかれた車両に加速してはならない義務が生ずるかどうかという点については、若干の疑問はあるが、法の趣旨から見て消極に解すべきであろう。」ともある。こちらの出典は改正後である1966年の文章。
(2023年5月アクセス) Webページ
上記の法学者や警視監*12の書いた文献に比べると信頼度は落ちるかも知れませんが、速度超過について記述するページがいくつかありました。
なお、「27条1項については警察の執務資料で、疑問はあるとしつつ、追いついた車両が制限速度に違反している場合には適用されないとしています。
そこから考えて、27条2項について指定最高速度を上回っているときは含まれないと考えます。」
www.bengo4.com
第二十七条だけではなく、広く「優先規定」に対し、速度超過に対しては義務がないと明記。
大原則として、優先規定は適法に通行する場合を対象にするため、速度超過している車両に譲らなければならない義務はないです。
roadbike-navi.xyz
前車が制限速度又は法定速度で走行していれば
後車が違反してまで追越してくる事を想定しなくても良いです。
違反車両には法律は適用しないのか!?
と思考停止的に考える人がいますがそういう事ではありません。
(中略)
信号無視して突っ込んでくる事を想定して青信号で一時停止しますか?
この信頼の原則を27条だけ無視する事は不条理です。
(2023年7月アクセス) Webページ
逆に言えば、最高速度で普通自動車を走らせていて、後ろから同じ法定速度のクルマに追い付かれた場合、「後ろの相手と同速度か、より速く走る」ことは違法なのでできません。つまり、法定速度を超えたクルマに追い付かれても譲る義務は無いのです。
trafficnews.jp
たとえ後続車が法定速度以上のスピードで追いついてきたとしても道を譲る義務は生じるのだ。
bestcarweb.jp
ちなみに、「27条については某県警本部交通課と議論して、自分が制限速度の上限又は速度超過の状態だったら譲る必要は無い。との見解でした」「規制速度、法定速度を越えた車に追いつかれた場合」には発生しません」などの批判コメントはついています。
明記されていない解説書もその他に数冊ありました。
註釈道路交通法の「現実の速度の如何」の意図は?
要約:当時の道路交通法では優先順位が最高速度ではなかったため「速度超過の車両に追いつかれても」を意図していないだろう。当時の十八条の優先順位は現実の速度より優先されることを意図しているだろう。
「専門家の解説でも矛盾しており諸説あるが義務はないとする説が有力である」とするのは簡単ですが、食い違う理由は気になります。註釈道路交通法やそれを引用している執務資料にある「現実の速度の如何を問わず」を引用し、これを「速度超過の車両に追いつかれても」と解釈する人を見かけます(後述する人を含む)。
他の文献や文脈を無視し、この文だけを読めばそのような解釈もあり得るでしょう。しかし理由が見つかれば嬉しいですし、私は納得する理由を見つけました*13。ちなみにこれは、第二十七条第2項の解説ではありますが、1文目の「最高速度が速い車両に追いつかれた場合」の解説です*14。
まず注意すべきは横井註釈、つまり『註釈道路交通法』が書かれた時期が1961年である点です*15。1961年の道路交通法第二十七条は現在と異なります。
第二十七条(進路を譲る義務)
車両は、車両通行区分隊の設けられた道路を通行する場合を除き、第十八条に規定する通行の優先順位が先である車両においつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、道路の左側の寄つてこれに進路を譲らなければならない。優先順位が同じであるかまたは後である車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両が車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。
『註釈道路交通法』に載っている、当時の道路交通法第二十七条
また、第十八条に規定する通行の優先順位は下記となっていました。
一 自動車及びトロリーバス
二 自動二輪車及び軽自動車
三 原動機付自転車
四 軽車両
つまり、現行のような最高速度の比較ではなく、第十八条に規定する通行の優先順位で比較していた時代です。その条文に「現実の速度の如何を問わず」と解説しています。そのため『註釈道路交通法』が書かれた時代には、速度超過を意識して「後車が速度超過していても、追いつかれたら」を意図して書いたのではなく、優先順位を意識して「後車がおそい速度で進行していても、優先順位が先ならば」を意図して書いた文でしょう*16。
ということで、「現実の速度の如何を問わず」は古い条文に対して書かれた解説で、当時あった「優先順位」が高い車両には、「現実の速度の如何を問わず」譲る義務があるという解説だと思います。
これによれば、例えば下記の@UMR_PhDのツイートは間違っています。
また、私の読んだ『18-2訂版 執務資料 道路交通法解説』(下記)とは少し違っており、太字部分を抜かすミスもしてそうです*17。
「進路を譲る義務は双方の車両の現実の速度の如何を問わず、後順位の車両は、進路を譲らなければならないことになる。したがって、同順位又は後順位の車両に追いつかれた場合は、その追いついた車両の速度をこえる速度で進行すれば、後車に進路を譲る義務は生じない。後車の現実の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとする場合に、初めて進路を譲る義務が生ずる(横井註釈)」
18-2訂版 執務資料 道路交通法解説
まとめ
解説は下記のように見つかった。(図は2023年8月時点の図です。)
横井大三ら「最高速度が高い車両に追いつかれ」た場合、「進路を譲らなければならない」義務は「双方の車両の現実の速度の如何を問わず、後順位の車両は、進路を譲らなければならない」(本・義務あり・改正前の道路交通法に対する解説)
宮崎清文「最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ」た場合、「加速してはならない」義務は「法の趣旨からみて消極に解すべきであろう。」(本・義務なし)
道路交通執務研究会「最高速度が高い車両に追いつかれ」た場合、「進路を譲らなければならない」義務は「双方の車両の現実の速度の如何を問わず、後順位の車両は、進路を譲らなければならない」(本・改正前の道路交通法に対する横井大三らの解説を引用)
浅野信二郎「最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ」た場合、「進路を譲らなければならない」義務は、「危険を生じさせないようにする義務が一次的*18に追越しまたは追抜きをする車両の側にあることはいうまでもない」(本・一次的には義務なし)
橋本裕藏「最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ」た場合?、「加速してはならない」義務?は、「連続して進行する車両のうち後続車両が制限速度以内で進行していて、先行車両に接近した場合の先行車両の義務」(本*19・義務なし)
警察庁(運転免許技能試験)「追いついた車両が明らかにその道路の最高速度より速い速度の場合には適用しない。」(Webページ・義務なし))
弁護士ドットコム(おそらく「最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ」た場合も「最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ」も、)「進路を譲らなければならない」義務は、「指定最高速度を上回っているときは含まれない」(Webページ・義務なし)
ロードバイクが欲しい!初心者向けナビとても広く述べているが、「最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ」た場合、「進路を譲らなければならない」義務は、「優先規定は適法に通行する場合を対象にするため、速度超過している車両に譲らなければならない義務はない」(Webページ・義務なし)
happeebrthdae「制限速度未満又は法定速度未満をキープするなら(中略)義務あり」「法定速度まで速度をあげた時は(中略)義務は発生しません」(Webページ・速度による)
主観のまとめ
様々な記述があり、全く同じ場所を指していないとはいえ、義務なしと捉える方が有力だと感じました*20。義務ありとする横井大三の解説は、当時の法律の「優先順位」に対して書いた文であり、速度超過を意識したものではないと思ったのも要因です。
ただ、私の結論はあくまで「決められない*21」「判例を待つべきだろう」*22ですし、これは私の主観です。正解だと言っているわけではありません。
法曹三者などを気にする人がいたため、法曹三者ではない私は一応弁護士の方から3人、警察の方から2人、道路交通法に詳しいと思う友人から1人を呼び、どちらの立場の文献も見せたところ、断言しないまでもおそらく義務はないとするだろうという見解が多かったです*23。
本屋や図書館を7件巡り、Webページもできるだけ中立な検索を心がけましたが、手に入った本や閲覧したWebページが偏った可能性はあります。どちらの立場でも、不足の文献があれば教えてくれると嬉しいです。値段や入手性などの問題があるので買うとは限りませんが……
誤情報(もしくは偽情報)を流すのも、他人を罵倒するのも、危険な運転もやめましょう!
付録
ベリーベスト法律事務所の言及している範囲
で引用している 追いつかれた車両の義務違反とは? 反則金や罰金についても解説 には、最高速度が高い車両に追いつかれた場合の解説段階として*24、「最高速度とは、法定の最高速度であり、現実に先行車と後続車の速度がどのくらいであったかという点は関係ありません。」と書かれています。また「追いつかれた車両の義務違反を犯さないためには、制限速度を守り、前方を注視しているだけでは足りません。」と書いてあるため、追いつかれた車両の義務違反は制限速度を守ることを前提としているとも読めますし、前後の文脈からそんなことはないと思いますが、あえて文字上だけで言えば制限速度を守っているだけでは足りないから時には速度超過をした方がいいとも読めます*25。
道路交通法第二十七条第2項が2文に分かれている理由
@hiroshima_potは「法律では制限速度内で走ってるのが前提だから、(中略)制限速度が違う車の場合とか、制限速度を下回る速度で走る場合について譲る義務があると書いてあるわけで。」と書いていました。しかしおそらく法律は条文を追加して対応したため2文になっただけの可能性もあります。
最高速度(制限速度)の差によって文が分かれているのは確かに不自然だと感じました。現行の道路交通法第二十七条の第2項は下記のように書かれています。(空白は比較を容易にするために挿入しました。)
- 車両は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、最高速度が高い車両に追いつかれ、 かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、できる限り道路の左側端に寄つてこれに進路を譲らなければならない。
- 最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。
「最高速度が高い車両に追いつかれ」た場合には、その追いついた車両の速度よりもはやい速度で進行しようとしても義務が生じる文である。そのため、1文にまとめると意味が変わってしまうが、たとえ最高速度が高い車に追いつかれてもその車両よりはやい速度で進行するなら譲らなくていいとすれば*26、下記のように書けます。
車両は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするとき、できる限り道路の左側端に寄つてこれに進路を譲らなければならない。
しかしそうは書かれていないため、何らかの理由、例えば先ほどの「たとえ最高速度が高い車に追いつかれてもその車両よりはやい速度で進行するなら譲らなくていい」は間違いであるなどの理由があるとする@hiroshima_potの説だと思います。
これは私の推測ですが、その何らかの理由に、
仮の理由A「最高速度が速い車両に追いつかれた場合、追いつかれた車両が最高速度(制限速度ギリギリ)で進行してもなお追いついた車両はそれよりはやい速度で進行しようとし、それを妨害することになるから。」も考えられる。その場合、追いつかれた車両はその最高速度で走っても妨害しうるから1文目には追いつかれた車両の速度(最高速度の範囲内)にかかわらず義務が発生する。一方で2文目にはその追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときと追加されているように、その追いついた車両と最高速度が同じなのだから最高速度(制限速度ギリギリ)で進行すれば追いついた車両がそれよりはやい速度で進行しようとし、それを妨害することになる場合、追いついた車両の速度超過なのだからそれは考えなくて良い。
という理由があると推論してみました。現行の道路交通法だけを見れば仮の理由Aが正しいとは決められないがおかしくもないと感じます。ただこれに関しては、今は廃止されて道路交通法に代わった道路交通取締法施行令の第二十四条で
前車が後車よりも法*27第十六条第一項及び第二項の規定による順位が後順位でのものであるときは、前車は後車に進路を譲るために道路の左側によらなければならず、その他の時は、追越を妨げるだけの目的をもつて後車の進路を妨げる行為をしてはならない
道路交通取締法施行令 第二十四条
と書かれ、道路交通取締法第十六条では
車馬及び軌道車相互の間の通行についての順位は、左の各号の順序とする
一 緊急自動車
二 緊急自動車以外の自動車及び軌道車
三 自動車以外の車馬
車馬又は軌道車は、前項に定める先順位の自動車又は軌道車に進路を譲らなければならない。
道路交通取締法 第十六条
と書かれていた法律を元として1960年に道路交通法を施行した際、追記したために別で書かれたと私は推測しています*28。
要約:めたまる(@UMR_PhD)は道交法の第一条から譲る義務があると主張するが、道交法の目的は運転者の義務ではないし、「交通の安全」などから「譲るべき/譲らないべき」まで論理を飛躍させている。第七十条の安全運転の義務についても、「譲るべき/譲らないべき」まで論理を飛躍させている。第一条も第七十条も、二十七条の解釈の明確な根拠にはなっていない。
速度超過の車両に追いつかれた場合の義務について、@UMR_PhDは道路交通法の第一条を持ち出し、「道交法は危険防止と安全と円滑を目的としているので,違反した後続車を留めるのがそれに沿うものかということも考えると……」とツイートします。
それに対し、新たに登場した@sui__ginがリプライで「考えるとどうなるんでしょう?」と問いかけます*29。
それに対し、@UMR_PhDがリプライで「第二十二条最高速度と第二十二条の二最高速度違反行為に係る車両の使用者に対する指示は知っていますが,違反車両が存在している場合でも危険を防止して交通の安全と円滑を図るということにはかわりは無いのではないですか?(違反車両が暴走している可能性があればそれを回避する責任があると思うので)」と返しています*30。
それに対し、@sui__ginがリプライで「危険を防止して交通の安全と円滑を図る第一条は「法律の」目的です。これは目的既定であり、制定目的を述べる物です。運転者がそれを満たすようにする義務とは関係ないと思います。」と返しました。
そしてそれに対し、@UMR_PhDがリプライで「第七十条安全運転の義務に「道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」とあるのでそこは関係あると思いますが」と返しています。
それに対し、@sui__ginがリプライで「もしそれを使うなら第一条を持ち出すのは不適切だし、今回の制限ギリギリで走っていて速度超過の車に追い付かれた場合は、自分が譲るためには速度超過をすることになると思いますが、それが他人に危害を及ぼさないような速度と方法なのでしょうか?」と問いかけます。
2023年5月13日の段階で、このツイートに@UMR_PhDからのリプライはありません。そのため@UMR_PhDが納得したのか、あきれたのか、はたまた見逃したのかなどは不明です。
@sui__ginの「第一条を持ち出すのは不適切」という指摘には私は同意しています。
元々の話が「自分も超過せざるをえない(2023年4月27日)」なためか、@sui__ginは速度超過の車両に追いつかれた場合に義務が発生しないように速度を出す話をしています。他の車両に追いつかれた車両の義務の中でも1つの選択肢に限ってしまっているような気がしますが、第七十条の「他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転」が「速度超過の車両に対しても進路を譲る義務」や「速度超過してまで義務を回避する義務」に直接つながるかは私にも疑問です*31。
条文に書いてないならその条件はないか?それとも常識だから書いてないだけか?
要約:どちらとも言えない。今回は書いてないが条件はあるとするのが有力。
めたまる(@UMR_PhD)は書いてないから生じるという説を提示。広島鍋(@hiroshima_pot)はわざわざ速度超過している車両には義務が生じるなんて書かないという説を提示。(ネタバレすると義務は生じないとする解釈が有力であるが、条文には書いてない。)
というツイートがありました。このツイートはWebサイト「速度超過の車に追いつかれた場合「追い付かれた車両の義務」はない」を出典とし、さらにそのWebサイトは下記を根拠としています。
追いつかれ義務違反
2 車両通行帯が設けられていない道路の中央(一方通行となっているときは道路の右側端)との間に追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合に、できるだけ道路の左側端に寄ってこれに進路を譲らないとき。ただし、追いついた車両が明らかにその道路の最高速度より速い速度の場合には適用しない。
出典:運転免許技能試験に係る採点基準の運用の標準【 減点適用基準】 警察庁
これは道路交通法ではなく、運転免許技能試験での判断ですが、警察庁*32の見解*33の1つです*34。
また、それに対し@UMR_PhDは下記のように「広島鍋って法律の文章をちゃんと読まずに,法律家ではない人間が適当に解釈した文章を元に他人を罵倒する滑稽な人間のオブジェですね(道交法には後続車の速度違反に関しては一切書いていない)https://t.co/8Sgps7zjHM https://t.co/0yF8cVi51f」と返します*35。
なお、書いてない理由に関して、@hiroshima_potは「わざわざ書いてないだけ」という説で返します。
道路交通法の解説 by @hiroshima_pot
要約:広島鍋 (@hiroshima_pot)は『道路交通法の解説』から、制限速度以内での義務を規定と書いてある部分を引用した。めたまる(@UMR_PhD)と議論は平行線になった。
知恵袋経由ですが、@hiroshima_potは『道路交通法の解説』を引用します*36。
「連続して進行する車両のうち後続車両が制限速度以内で進行していて、先行車両に接近した場合の先行車両の義務を規定しています」
道路交通法の解説
『道路交通法の解説』が手に入らなかったので記述の正確さや記述の正確な位置はまだわかりませんが、両車両が制限速度以内での義務だと書かれています*37。
注解道路交通法 by @Fyioon1
要約:Fyioon (@Fyioon1)は速度超過している車両に追いつかれた場合、譲る義務は「法の趣旨から見て消極に解すべき」と引用。ただし「現実の速度」についての発言は少々意味不明であり、Twitterではあるが弁護士と思われる人にも否定されている。
さらに新しく@Fyioon1が登場します。全てのツイートに対して言及するのは困難なので少し飛ばしていますが、@UMR_PhDが@Fyioon1に法曹三職(法曹三者の間違い?)かどうかを聞いたところです。おそらくどちらも法律の専門家ではありません*38。
これも第27条第1項の解説ですが、明示的に速度超過の場合が書かれており、「若干の疑問はあるが、(中略)消極に解すべき」、つまり義務なしとすべきだろうと述べています*39。第27条第1項ではあるものの、先に@UMR_PhDが述べた第一条のような法の趣旨から見る解釈を考えるならば、第2項の最高速度が同じ車両でも、速度超過の車両に対して義務が生ずるかという点については「若干の疑問はあるが、(中略)消極に解すべき」つまり義務なしとすべきだろうとされています。
「現実の速度」の、@Fyioon1の解釈(筆者は意図がうまく読めませんでしたが読者は読めるかも知れないので載せます)
@Fyioon1は「現実の速度」と別に「法定の最高速度を超える速度」が書いてあり、「現実の速度」は法定内での速度を意味していると読むのが自然」と述べています。
現役の弁護士*40によればこの読み方は違うとのこと。
@Fyioon1は前後の文脈を強調していた一方で、@shibekemokemoの返信が3分後なので@UMR_PhDの引用のみから判断しているように思います*41が、「現実の速度」は法定内での速度を意味していると読むのが自然」ではないとのことです*42。
『注解道路交通法』を読んでみたところ、「現実の速度」は「最高速度」と引き合いに出されている単語であり、「たとえ制限速度を超えようとも」より「最高速度に達していない場合でも」を意図した可能性が高いと感じました。ただ、@Fyioon1は『注解道路交通法』を引用しましたが、『18-2訂版 執務資料 道路交通法解説』が引用しているのは『註釈道路交通法』です。こちらは「現実の速度」は「最高速度」と比較的離れていて対比とまでは言えないと思いました*43。
主観では、「現実の速度」が意味するところは法定速度内に限られないとは思いますが、著者が法定速度内のみを想定して「現実の速度」を使った可能性はある*44と思っています。