学生(子)が働く場合の税関連について
(間違いがあるかもしれないので、そこは自己責任でよろしくお願いします。教えていただけると幸いです。Twitter: @D_Plius )
キーワード:給与所得、勤労学生、控除対象配偶者、扶養親族、控除対象扶養親族、特定対象扶養親族
学生が働く場合、問題となるのは学生自身の所得税ではなく親の所得税であることが多いです。
そのため、まずは親の所得税の計算方法を理解し、自分が稼ぐ額を計算します。
・給与所得
(物価変動などを考慮してか改定箇所が非常に多いですので、2016年1月16日現在の情報です。)
給与所得は所得税法第二十八条によって
(給与所得)第二十八条 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。
と定められてます。*1
そしていわゆる「所得控除額」が続きます。
3 前項に規定する給与所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。(以下略)
(表A)
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
162.5万円以下 | 65万円 |
162.5万を超え180万円以下 | 給与等の収入金額*40% |
180万円を超え360万円以下 | 72万円+(給与等の収入金額-180万円)*30% |
360万円を超え660万円以下 | 126万円+(給与等の収入金額-360万円)*20% |
660万円を超え1000万円以下 | 186万円+(給与等の収入金額-660万円)*10% |
1000万円を超え1500万円以下 | 220万円+(給与等の収入金額-1000万円)*5% |
1500万円超 | 245万円 |
給与所得控除額は恐らくここまでで基本的な理解でいいですが、厳密には第二十八条の4により非常に長い別表第五を参照することになります。*2
ここまで計算したものが、給与による所得金額と言われる金額です。
所得金額が「税金を引かれた後の額」ではなく「これから税金がかかりうる額」です。
(例1-1)給与収入が200万円の場合
給与等の収入金額が180万円を超え360万円以下なので、(表A)より、
給与所得控除額=72万円+(200万円-180万円)*30%=72万円+6万円=78万円
所得金額=200万-78万円=122万円
(厳密には別表第五により122万円となります。)
(例1-2)給与収入が500万円の場合(勤務先1から300万円、勤務先2から200万円)の所得金額
勤務先の数にかかわらず、合計の給与収入500万円で計算されます。
給与等の収入金額が360万円を超え660万円以下なので、(表A)より、
給与所得控除額=126万円+(500万円-360万円)*20%=126万円+28万円=154万円
所得金額=500万円-152万円=346万円
(厳密には別表第五により346万円となります。)
次に扶養控除によって控除額が定められています。
(扶養控除)第八十四条 居住者が控除対象扶養親族を有する場合には、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から、その控除対象扶養親族一人につき三十八万円(その者が特定扶養親族である場合には六十三万円とし、その者が老人扶養親族である場合には四十八万円とする。)を控除する。
扶養親族の種類ついては以下のように定められています。
(定義)第二条
三十四 扶養親族 居住者の親族(その居住者の配偶者を除く。)(中略)のうち、合計所得金額が三十八万円以下である者をいう。
三十四の二 控除対象扶養親族 扶養親族のうち、年齢十六歳以上の者をいう。
三十四の三 特定扶養親族 控除対象扶養親族のうち、年齢十九歳以上二十三歳未満の者をいう。
三十四の四 老人扶養親族 控除対象扶養親族のうち、年齢七十歳以上の者をいう。
よって、合計所得金額が38万円以下であれば 以下の扶養控除の種類と金額になります。
(表B)
親族の年齢(年末時点) | 受けられる扶養控除の種類 | 扶養控除による控除金額 |
16未満 | なし | 0円 |
16歳以上19歳未満 | 控除対象扶養親族 | 38万円 |
19歳以上23歳未満 | 特定扶養親族 | 63万円 |
23歳以上70歳未満 | 控除対象扶養親族 | 38万円 |
70歳以上(納税者か配偶者と常に同居) | 老人扶養親族(同居老親等) | 58万円[要出典] |
70歳以上(それ以外) | 老人扶養親族(同居老親等以外の者) | 48万円 |
参考文献:扶養控除の見直しについて(22年度改正) : 財務省
ここが「学生がなぜ103万円以上稼がない方がいいか」の基準です。
学生の「所得金額」が38万円以下の場合は控除対象扶養親族になるためには(表A)を用いた「所得控除」を逆算することによって38万円以下になる必要があります。
よって
・162.5万円未満の給与収入であり
・65万円の所得控除を受けた後の「所得金額」が38万円以下
に該当する38万円+65万円=103万円がいわゆる「103万円の壁」
となります。
(例2-1)親の年収が500万円、子(20歳)の年収が100万円の場合の(この段階までの)親の課税所得
給与収入が500万円の場合は上の(例1-2)に該当するため
親の所得金額=346万円
子の給与等の収入金額は162.5万円以下なので(表A)より、
子の給与所得控除額=65万円
子の所得金額=100万円-65万円=35万円
となり子の所得金額が38万円以下なので子は親の特定扶養親族に該当し、
(表B)より、親の所得金額から「特定扶養親族」の「扶養控除による控除金額」である63万円が追加で控除され、
親の課税所得=346万円-63万円=283万円
(例2-2)親の年収が500万円、子(20歳)の年収が105万円の場合の(この段階までの)親の課税所得
給与収入が500万円の場合は上の(例1-2)に該当するため
親の所得金額=346万円
子の給与等の収入金額は162.5万円以下なので(表A)より、
子の給与所得控除額=65万円
子の所得金額=105万円-65万円=40万円
となり子の所得金額が38万円以下ではないので子は親の扶養親族に該当しない。 よって
親の課税所得=346万円
ここで、(例2-1)と(例2-2)では親の課税所得に63万円(子の年齢によっては控除対象扶養親族で38万円)の差額が生じ、後述する所得税の計算で最終的な税金の差に繋がります。
勤労学生控除が存在し、以下により学生(子)はさらに27万円の控除を受けられます。
(勤労学生控除)第八十二条 居住者が勤労学生(直後述)である場合には、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から二十七万円を控除する。
(定義)第二条 三十二 勤労学生 次に掲げる者で、自己の勤労に基づいて得た事業所得、給与所得、退職所得又は雑所得(以下この号において「給与所得等」という。)を有するもののうち、合計所得金額が六十五万円以下であり、かつ、合計所得金額のうち給与所得等以外の所得に係る部分の金額が十万円以下であるものをいう。
イ学校教育法第一条 (学校の範囲)に規定する学校の学生、生徒又は児童
次に社会保険料控除が定められています。
「健康保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」に該当する額が控除されます。
(社会保険料控除)
第七十四条 自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料を支払つた場合又は給与から控除される場合には、その支払つた金額又はその控除される金額を、その居住者のその年分の所得金額から控除する。
一 健康保険法 (大正十一年法律第七十号)の規定により被保険者として負担する健康保険の保険料
二 国民健康保険法 (昭和三十三年法律第百九十二号)の規定による国民健康保険の保険料又は地方税法 の規定による国民健康保険税
四 労働保険の保険料の徴収等に関する法律 (昭和四十四年法律第八十四号)の規定により雇用保険の被保険者として負担する労働保険料
支払っている場合は、これらの保険料が控除されます。
健康保険料についてですが、まずほとんどの人が加入していると思われますので健康保険料の計算を始めます。
まず、支払う人は健康保険法によって以下のように定められています。
(目的)
第一条 この法律は、労働者又はその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。
そして、この「被扶養者」については
(定義)
第三条
7 この法律において「被扶養者」とは、次に掲げる者をいう。ただし、後期高齢者医療の被保険者等である者は、この限りでない。
一 被保険者の直系尊属、配偶者、子、孫及び弟妹であって、主としてその被保険者により生計を維持するもの(要約)
とされています。
ここでは厳密に「主としてその被保険者により生計を維持するもの」が定義されていないため、
次の通知「収入がある者についての被扶養者の認定について」を参照する事となり、
収入がある者についての被扶養者の認定について(◆昭和52年04月06日庁保発第9号保発第9号)
1 被扶養者としての届出に係る者(以下「認定対象者」という。)が被保険者と同一世帯に属している場合
(1) 認定対象者の年間収入が一三〇万円未満(認定対象者が六〇歳以上の場合を省略)であって、かつ、被保険者の年間収入の二分の一未満である場合は、原 則として被扶養者に該当するものとすること。
2 認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合
認定対象者の年間収入が、一三〇万円未満(認定対象者が六〇歳以上の場合を省略)であって、かつ、被保険者からの援助に依る収入額より少ない場合 には、原則として被扶養者に該当するものとすること。
年間収入についての注釈 *3
これにより、
同一世帯ならば年間収入が130万円未満であり扶養者の年間収入の半分未満であれば、
同一世帯ではなくても年間収入が130万円未満であり被保険者からの援助による収入未満であれば
「被扶養者に該当する」つまり、親の健康保険料で保険を受けられることになります。(2016年10月から106万円未満に変更予定。) *4
(所得金額ではなく年間収入であるため、給与控除などは関係なく、収入で計算されます。)
健康保険料は扶養家族の有無・人数にかかわらず、保険料は変わりません。
よってここで変わるのは親の健康保険料ではなく、学生の健康保険料です。
健康保険料は都道府県別に違うので、平成27年度保険料額表 | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会を参照します。
今回は東京都で計算します。
平成27年度の保険料は27年9月分(10月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
を用いて計算します。
ここで出て来る「標準報酬月額」は以下のように定められています。
(定時決定)
第四十一条 保険者等は、被保険者が毎年七月一日現に使用される事業所において同日前三月間(その事業所で継続して使用された期間に限るものとし、かつ、報酬支払の 基礎となった日数が十七日未満である月があるときは、その月を除く。)に受けた報酬の総額をその期間の月数で除して得た額を報酬月額として、標準報酬月額 を決定する。
通常は4~6月の3ヶ月の給料の平均ですが、手当を含み、賞与や臨時収入は含まれません。
また、介護保険第2号被保険者は健康保険に加入している40歳以上65歳未満の人です。
健康保険料は会社と労働者が半額ずつ支払っているので、実際に支払う額は表の折半額となります。
1円未満の端数について*6
雇用保険料率
雇用保険料は労働保険の保険料の徴収等に関する法律によって定められています。
(一般保険料の額)
第十一条 一般保険料の額は、賃金総額に第十二条の規定による一般保険料に係る保険料率を乗じて得た額とする。
2 前項の「賃金総額」とは、事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払う賃金の総額をいう。
(一般保険料に係る保険料率)
第十二条 一般保険料に係る保険料率は、次のとおりとする。
一 労災保険及び雇用保険に係る保険関係が成立している事業にあつては、労災保険率と雇用保険率とを加えた率
二 労災保険に係る保険関係のみが成立している事業にあつては、労災保険率
三 雇用保険に係る保険関係のみが成立している事業にあつては、雇用保険率
4 雇用保険率は、千分の十七・五とする。ただし、次の各号(第三号を除く。)に掲げる事業については千分の十九・五とし、第三号に掲げる事業については千分の二十・ 五とする。(以下略)
よって賃金全体の17.5%となりそうですが、
5 厚生労働大臣は、(中略)必要があると認めるときは、労働政策審議会の意見を聴いて、一年以内の期間を定め、雇用保険率を千分の十三・五から千分の二十一・五まで(中略)の範囲内において変更することができる。
とあり、平成27年度は雇用保険料は労働者負担が0.5%、事業主負担が0.85%となっています。[要出典]
(適用除外) 第六条 次に掲げる者については、この法律は、適用しない。
五 学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)第一条 、第百二十四条又は第百三十四条第一項の学校の学生又は生徒であつて、前各号に掲げる者に準ずるものとして厚生労働省令で定める者
(例3-1)親(40歳)の年収が500万円(基本給30万円、賞与は年二回の70万円)、子(同一世帯)の年収が120万円(基本給10万円)の場合の健康保険料と厚生年金保険料と雇用保険料
まず、子の年間収入は130万円未満であり、親の年間収入の半分未満であるため、子は親の被扶養者に該当します。
よって子の健康保険料は0円です。
親の健康保険料は基本給が30万円なので
平成27年度保険料額表 | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会より、
等級22(18)に該当し、 40歳のため介護保険第2号被保険者に該当するため
厚生年金保険料=26742円
雇用保険料(被保険者負担分)=500万円*0.5%=25000円
健康保険料=17325円
厚生年金保険料=26742円
雇用保険料(被保険者負担分)=25000円
(例3-2)子(20歳、学生)の年収が180万円(基本給15万円)の場合の健康保険料と厚生年金保険料と雇用保険料
この年間収入が130万円未満ではないため、子は健康保険料と厚生年金保険料を納める事になります。
子の標準報酬月額が15万円なので
平成27年度保険料額表 | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会より、
等級12(8)に該当し20歳のため介護保険第2号被保険者には該当しないため
月額健康保険料=7477.5円(7477円とする)
健康保険料=89724円
月額厚生年金保険料=13371円
厚生年金保険料=160452円
雇用保険料=0円
(事業主が給与から被保険者負担分を控除する場合は被保険者負担分が7477円、被保険者が被保険者負担分を事業主に現金で支払う場合は7478円となります。)
これらの金額*12ヶ月分がそれぞれの所得金額から控除されます。
次に基礎控除によって控除額が定められています。
(基礎控除) 第八十六条 居住者については、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から三十八万円を控除する。
そして控除された後の「給与所得の金額」に税率が定められています。
一律38万円と非常にわかりやすいと思います。
そして所得税が課されます。所得税法により以下のように定められています。
(税率)第八十九条 所得税の額は、その年の課税総所得金額を次の表に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に同表に掲げる税率を乗じて計算した金額とする。(要約)
(表C)
課税総所得金額(控除後) | 税率 |
195万円以下 | 5% |
195万円を超え330万円以下 | 10% |
330万円を超え695万円以下 | 20% |
695万円を超え900万円以下 | 23% |
900万円を超え1800万円以下 | 33% |
1800万円を超え4000万円以下 | 40% |
4000万円超 | 45% |
とても分かりにくいと思いますが一度計算してみます。
(例4-1) 親(50歳)の年収が1000万円(基本給75万円+賞与100万円)、配偶者なし、子(20歳、1人)の年収が0円の場合の親の所得税
給与所得控除額は(表A)より660万円を超え1000万円以下なので
給与所得控除額=186万円+(1000万円-660万円)*10%=186万円+34万円=220万円
所得金額=1000万円-220万円=780万円
子が19歳以上23歳未満なので、
特定扶養親族控除=63万円
等級38の健康保険料により43312.5円(43313円として)
健康保険料43313*12=519756
厚生年金保険は等級が上限の30となり55266.8(55267円として)
厚生年金保険料=663204
雇用保険料=1000万円*0.5%=50000円
基礎控除=38万円
よって(所得税の)控除を行うと
780万円-63万円-519756円-663204円-50000円-38万円=5557040円となり
課税総所得金額はこの金額から千円未満の端数金額を切り捨てた
課税総所得金額=555.7万円
よって
195万円以下の195万円に対して5%
195万円を超え330万円以下の(330万円-195万円=)135万円に対して10%
330万円を超え695万円以下の(555.7万円-330万円)=225.7万円に対して20%
を計算し
所得税=195万円*5%+135万円*10%+225.7万円*20%=68万3900円
となります。
区分ごとに分けてそれぞれの税率を乗じて加算するのが煩雑なため、以下の様な所得税の速算表が用いられることが多いです。
速算表は給与所得控除額のように1度の計算で済むようになっているため非常に便利です。*8
課税される所得金額(控除後) | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636000円 |
900万円を超え1800万円以下 | 33% | 1536000円 |
1800万円を超え4000万円以下 | 40% | 2796000円 |
4000万円超 | 45% | 4796000円 |
これにより、上記の(例4-1) は
555.7万円なので
所得税555.7万円*20%-427500円=68万3900円
ここまでで簡単な所得税のシステムの説明は同じです。
(例4-2)例4-1の親と、学生(子、20歳)の年収が100万円の場合の親と子の所得税
学生について、給与所得控除(65万円)により
学生の所得金額は100万円-65万円=35万円
さらに勤労学生控除(27万円)、基礎控除(38万円)を用いることで
課税所得金額は0円となります。
よって
子の所得税=0円
また、子の所得金額が38万円以下なので子は親の特定扶養親族に該当します。
子によって親が使える扶養控除額=63万円
よって親の所得税は例4-1の通り
親の所得税=68万3900円
(例4-3)例4-1の親と、学生(子、20歳)の年収が105万円の場合の親と子の所得税
学生について、給与所得控除(65万円)により
学生の所得金額は105万円-65万円=40万円
さらに勤労学生控除(27万円)、基礎控除(38万円)を用いることで
課税所得金額は0円となります。
よって
子の所得税=0円
この所得金額が38万円を超えたため、子は親の扶養家族に該当しません。
よって子によって親は扶養控除を使えません。
親の課税総所得金額は
780万円-519756円-663204円-50000円-38万円=6187040円→618.7万円
速算表の300万円を超え695万円以下に該当し
親の所得税=618.7万円*20%-427500円=80万9900円
ここで、例4-2と例4-3を見比べることで、子の年収が5万円増えたことにより親の所得税が12万6000円(=63万円*20%)増加し、総合的な収益が-76000円になります。
これが103万円の壁と呼ばれる逆転現象です。
給与控除や累進課税による所得税についてはこのような逆転現象が起きないようになっているのですが扶養親族に関しては逆転現象が生じるので気をつけましょう。
次に130万円の壁を説明します。
(例4-4)例4-1の親と、学生(子、20歳)の年収が125万円の場合の親と子の所得税
学生について、給与所得控除(65万円)により
学生の所得金額は125万円-65万円=60万円
さらに勤労学生控除(27万円)、基礎控除(38万円)を用いることで
課税所得金額は0円となります。
よって
子の所得税=0円
親の所得税は例4-3と同様に
親の所得税=80万9900円
(例4-5)例4-1の親と、学生(子、20歳)の年収が130万円(基本給10万8333円程度)の場合の親と子の所得税と保険料
学生について、給与所得控除(65万円)により
学生の所得金額は130万円-65万円=65万円
さらに勤労学生控除(27万円)、基礎控除(38万円)を用いることで
課税所得金額は0円となります。
よって
子の所得税=0円
しかし、子の年間収入が130万円未満ではないため、子に保険料がかかります。
子の標準報酬月額は10万8333円程度なので
等級7(3)に該当し、
子の健康保険料=5463*12=65556円
子の厚生年金保険料=9805*12= 117660円
子の雇用保険料=0(学生なので適用除外)
親の所得税は例4-3と同様に
親の所得税=80万9900円
ここで、例4-4と例4-5を見比べることで、子の収入が5万円増えたことにより子の社会保険料が65556+117660=183216円増加しており、子についての総合的な収益が-133216円となります。
この逆転現象が130万円の壁です。
雑所得の場合(奨励金の場合であり、奨学金の場合ではない)
第三十五条 雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。
給与所得控除が使えないため、38万円の壁となります。低い壁なのであまり気にされませんが、年額40万円程度の奨励金の場合は気をつけましょう。
雑所得の場合は所得税ではなく社会保険料によって130万円の壁が生じます。
*1:「2 給与所得の金額は、その年中の給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した残額とする。」とあり、給与所得の金額は、「給与所得」の「金額ではないです」
*2:
4 その年中の給与等の収入金額が六百六十万円未満である場合には、当該給与等に係る給与所得の金額は、前二項の規定にかかわらず、当該収入金額を別表第五の給与等の金額として、同表により当該金額に応じて求めた同表の給与所得控除後の給与等の金額に相当する金額とする。
別表第五は長いので記載しませんが、基本的に端数の丸め処理が行われる程度だと思います。ちなみに別表第五の199万2000円から199万6000円の箇所が199万6600円になって間違っています。
*3:今年12月の労働に対して給与が翌年1月に支払われる事があります。
「年間収入」とは、一般に1月から12月に得た収入を指しますが、「発生主義」という考え方によって「1月から12月に『収入すべき権利の確定した金額』」を指します。
ただし、青色申告者で一定の条件に当てはまる小規模事業者の場合は「現金主義」を選択することによって実際に得た収入にすることも可能らしいです。
参考文献: No.2200 収入金額とその計算|所得税|国税庁
「現金主義」の場合は前年12月の労働に対して今年1月に支払われている可能性が高いのでそれほどは変わりませんが、一般的には継続的に年間130万円以上の収入がある場合は払う義務が生じる可能性があるらしいです
*4:公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律によって第十二条に以下の一号が追加されます。
(適用除外)
第十二条 次に該当する者は厚生年金保険の被保険者としない
五 事業所に使用される者であって、その一週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律 第二条に規定する通常の労働者の一週間の所定労働時間の3/4未満である同条に規定する短時間労働者又は一月間の所定労働日数が同一の事務所に使用される通常の労働者の一月間の所定労働日数の3/4未満である短時間労働者に該当し、いずれかの要件に該当するもの
イ 1週間の所定労働時間が20時間未満であること
ロ 当該事業所に継続して一年以上使用されることが見込まれないこと
ハ 報酬について、厚生労働省で定めるところにより、第二十二条第一項の規定の例により算定した額が88000円未満であること
ニ 学校教育法第五十条に規定する高等学校の生徒、同法第八十三条に規定する大学の学生その他の厚生労働省で定めるものであること
分かりにくい書き方ですが、どれかに該当すると被保険者としないので、全部該当しないなら被保険者になるわけです。
つまり学生なら基本的には被保険者とはなりません。
ただし、休学中の場合は被保険者に含まれます。
詳しくは短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大を参照
*5:昇給などで大きな変動があれば変動後の平均が計算されます。
*6:端数については、通貨の単位及び貨幣の発行などに関する法律を参照します。
(債務の支払金の端数計算)
第三条 債務の弁済を現金の支払により行う場合において、その支払うべき金額(数個の債務の弁済を同時に現金の支払により行う場合においては、その支払うべき金 額の合計額)に五十銭未満の端数があるとき、又はその支払うべき金額の全額が五十銭未満であるときは、その端数金額又は支払うべき金額の全額を切り捨てて 計算するものとし、その支払うべき金額に五十銭以上一円未満の端数があるとき、又はその支払うべき金額の全額が五十銭以上一円未満であるときは、その端数 金額又は支払うべき金額の全額を一円として計算するものとする。ただし、特約がある場合には、この限りでない。
*7:所得税の基礎控除であり、住民税の基礎控除は33万円です。
*8:なんで給与所得控除と累進課税では違う方式で法律が作られているのでしょう?
*9:ここでの控除額は(5557000-427500)*20%ではないことに気をつけてください