個人的おいしいカレーの作り方
How to make delicious curry
ファッションようじょ
Pokemon GO Trainer at NEET Company
Twitter: @D_Plius
自分が好きなカレーを見つけるには、自分で比較しなければならない。さらに好みのを見つけるなら早い方がいい。そこで、様々なカレーを作って食べた。その結果感じたおいしさは、カレー絶品 > GOLDEN CURRY > DINNER CURRY > ジャワカレー > バーモンカレー = PREMIUM熟カレーだと感じた。点数を付けて後から解析した結果では、カレー絶品 > GOLDEN CURRY > DINNER CURRY > バーモンカレー > ジャワカレー > PREMIUM熟カレーとなった。どれもまずいとは感じていない。カレー絶品が90点でPREMIUM熟カレーが70点くらい。。
1. はじめに
近年、コロナウイルスにより外食が減っている。食事回数が変化しないなら、自炊が増加している*1。カレーライスは一度に大量に作れるため、ひとり暮らしで自炊が面倒な人に向いている。さらに、カレーは初心者にも向いている。ところでそのカレーのルーはどう選べばいいのか? 材料をみてもあまり差はわからず、レシピも似通っている。パッケージデザインと量と値段くらいしか情報はない。わざわざブランドサイトを見てもわからない。そこで、私がカレーに求める「味」を中心に食べ比べを行い、感想を記録した。
2. 実験材料
部屋:約300 K、湿度40%程度。エアコンは除湿で常時ON、換気扇も調理中は常時ON。
冷蔵庫:ほとんど空の状態で用いた。カレーの保存には最上段を使った。
カレールー:各ブランドでの中辛の製品を用いた。詳細は後述。
米:通常炊飯モードで炊いた炊きたての茨城県産コシヒカリ150 g。
肉:牛モモブロック(約2 cm角)・牛切り落とし・豚バラブロック(約2 cm角)・豚切り落とし・鶏肉から揚げ用。一度に500 gを購入し冷凍。毎回使用分を室温で3時間放置した後に用いた。
たまねぎ・じゃがいも・にんじん:1個単位で購入できる店で購入。*2
水:東京都の水道水。水は蒸発するため、とろみを考慮して追加した物もある。
皿・スプーン・鍋・サラダ油:同じもの。
2.1 製品概要
1皿分相当の情報を概算した。
|
カレー絶品 |
GOLDEN CURRY |
DINNER CURRY |
ジャワカレー |
バーモントカレー |
PREMIUM熟カレー |
製造者か販売者 |
江崎グリコ |
S&B |
S&B |
ハウス食品 |
ハウス食品 |
江崎グリコ |
辛味順位表 |
3 |
3 |
4 |
4 |
2 |
3 |
エネルギー |
117 kcal |
85 kcal |
103 kcal |
111 kcal |
100 kcal |
107 kcal |
肉 |
50 g |
50 g |
60 g |
50 g |
40 g |
40 g |
たまねぎ |
50 g |
50 g |
80 g |
40 g |
70 g |
50 g |
じゃがいも |
- |
20 g |
- |
30 g |
40 g |
40 g |
にんじん |
25 g |
30 g |
- |
20 g |
20 g |
25 g |
サラダ油 |
5 ml |
5 ml |
3 ml |
3 ml |
3 ml |
5 ml |
水 |
100 ml |
150 ml |
120 ml |
150 ml |
120 ml |
100 ml |
値段 |
40円 |
40円 |
35円 |
30円 |
20円 |
25円 |
レシピ・量:各製品に書かれた量を2皿分相当で調理した。
3. 実験方法(調理方法)
いずれも「具を炒める(5〜10分)」「水を入れる」「アクを取る」「煮込む(15〜20分)」「火を止める」「ルーを溶かす」「かき混ぜながら煮込む(5〜10分)」であり、大きな差はなかった*3。
連続して似たカレーを食べると飽きを感じるかもしれないため、ルー・野菜*4の種類・肉の種類は連続しないように配慮した。また、カレー絶品の次に食べるカレーがGOLDEN CURRY等に固定されないよう、あるルーの直後のルーはどの種類も1度以上、2度以下であり、野菜と肉の種類についても同様に、前回のカレーから次のカレーを予想できないようにエントロピーをあげている。これにより、前回食べたカレーに左右される要素を減らしている。ルー6種・寝かせの有無2種・野菜2種の有無*5・肉5種を全て試すと240回の実験が必要であり、趣味で行うには多すぎたため、それぞれほとんど独立に組み合わせた48回の実験を用意して重回帰分析を行った。詳しい実験計画はGoogle スプレッドシートにまとめた。寝かせる場合には、鍋ごと冷蔵庫で6時間保管し、沸騰するまでかき混ぜながら温めた後に食べた。
4. 実験結果
4.1 主観的な感想
総評:期待していたほどは差は感じなかった。どれも「いわゆる家庭のカレーライスの味」がした。その中で、カレー絶品は深い香りといわゆるコクのような物(ほんのり苦みにも近いメイラード反応の成果?)を感じた。ワインの渋みにも似ているかもしれない。総合的なおいしさは、カレー絶品(90点) > GOLDEN CURRY(85点) > DINNER(85点) CURRY > ジャワカレー(75点) > バーモンカレー(70点) = PREMIUM熟カレー(70点)だろうか。
辛さ:ジャワカレーは辛いと感じた。DINNER CURRYは多少辛かった。バーモントカレーは少し辛さにも物足りなさを感じた。他にあまり差を感じなかった。公式の指標はかなり正しい。辛くなさに気が付くのは、辛さに気が付くのに比べ格段に難しい。
香り(含み香):カレー絶品の香りが一番好きだった。マッシュルームを好きな私が、そのマッシュルームの匂いを好んでいるのもあると思う。PREMIUM熟カレーも少しいわゆるカレーとは違う匂いがした気がする。スパイス輸入二大巨塔だと思っているS&Bとハウスに比べると、材料の制限からこうなったかも知れない。
値段:ほとんど「高ければおいしい」。逆なら得だと感じるが、おいしさのために必要な支出があるのは自然である。
具:肉とタマネギだけでも十分飽きずに食べられた。肉 > たまねぎ > にんじん > じゃがいもの順で入っていないときに物足りなさを感じ、レシピに含まれる割合とも一致している。公式のレシピはよく考えられている。ブロックの方がカレー用と書かれており、豪華な見た目も期待していたが、味や食べやすさは切り落としの方がカレーライスには合っていると感じた。
保存:いわゆる寝かせる行為を試した。ウェルシュ菌などがあるためあまり今までしたことがなかった。味に深みがついたとはあまり感じなかった。具の柔らかさ、味のしみ方は変わったように感じたが、一度冷やした影響か6時間の影響かまでは本実験では判断できない。にんじんは寝かせた方がおいしいが、そのために作り置きをする気は起きない程度の差だった。
4.2. 主観的な点数から求めた係数
毎食を100点満点で評価した結果は長いのでこれもGoogle スプレッドシートにまとめた。最も点数の低かったPREMIUM熟カレー・最も野菜が少ないタマネギのみ・最も点数の低かった鶏ブロックを基準として係数を求めた。そしてその重回帰分析の結果は以下のようになった(Excelを用いて計算し、適宜四捨五入した)。
回帰統計 |
重相関R |
重決定R2 |
標準誤差 |
0.805 |
0.648 |
5.43 |
期待したほど差は無かったが、決定係数が0.65程度あり、相関係数*は0.8もあり強い相関が出るくらいには味わい分けられていた。標準誤差が5点程あるため、100点満点での5点程度は誤差か、体調・気候などによる差かも知れない*6。
ルーについて |
基準点数 |
68.5 |
カレー絶品 |
GOLDEN CURRY |
DINNER CURRY |
ジャワカレー |
バーモントカレー |
PREMIUM熟カレー |
12.1 |
9.8 |
7.8 |
1.3 |
5.1 |
0(基準) |
カレー絶品がおいしいと感じたのは正しかった。しかしジャワカレーのほうがバーモントカレーよりもおいしいと感じていたらしい。辛さによる減点は食べた直後には大きく働き、数日経つと忘れてしまうのではないか? という仮説が立てられる。その点で、直後の感想に比べていい思い出ができるのはジャワカレーと言えるのだろうか。
寝かせと野菜について |
寝かせあり |
にんじんあり |
じゃがいもあり |
1.6 |
5.0 |
-4.8 |
寝かせに関しては誤差かも知れないが、どちらかというと寝かせたカレーが好みらしい。ただ、標準誤差の3割ほどなので、寝かせてもまずくはならない程度に覚えておこうと思う。にんじんは好きで、じゃがいもは猫舌で苦しんだ思いがこの結果になったのだろうか。猫舌も数日で忘れてしまう要素だと考えられる。じゃがいもはお金を出してまで入れなくてもよい。
肉について |
牛モモブロック |
牛切り落とし |
豚バラブロック |
豚切り落とし |
鶏肉から揚げ用 |
1.7 |
2.6 |
7.0 |
8.7 |
0(基準) |
実験前には牛の方が豪華でおいしいと思っていたが、付けた点数は豚の方が高かった。牛こまと豚こまでは豚の方が高く、関東系の味覚なのかも知れない。豚の方が安いのでありがたい。また、カレーライスとして食べたため、切り落としの方がおいしく感じたのは印象に残っていたが、牛と豚の違いに比べると小さい。関東で売っているルーが豚肉と相性が良い可能性もある。
回数*7の係数は、-0.054であった。48回行ったため、100点中2.4点ほどの飽きが生じたと捉えた。
5. まとめと今後の課題
いつも安さで選んでいたが、高いカレールーではおいしいカレーができるのか? という個人的な疑問から始まった食べ比べであったが、その仮説を検証したところ期待以上の関係があった。総合的なおいしさ以外にも得られるものは多く、1食20円程度でこれらを選べると思えばこの実験で得られたものは多い。
しかしこれは私の感想・私の好みである。この実験は全部で1万円/50食程度であり、50回カレーを食べる方が一般人にはコストだろう。一人分を売っていないカレールーの問題であったが、4人家族などであればより気楽に色んなカレーを楽しめるだろう。是非皆さんにも試して貰いたい。とりあえずは豚切り落としを使うのが得策だろうが、幸福度と点数が比例していると仮定すれば、幸福1点あたりにかかる価格も計算できるだろう。
こくまろカレー[7]やザ・カリー[8]*8やとろけるカレー[9]など他にもカレールーは多い。全てのカレールーを試すのは難しいが、近くの店に売っているルーは試そうと思う。
今回の実験では米の品種・炊き方は1種類である。カレールーの地域差は問い合わせればわかるかも知れないが試してみたい。カレールーを複数種類混ぜて使う家庭もあるだろう。隠し味も楽しいかも知れない。それ全てを試すのは組合せ爆発が起きるだろうが、これらの好みは今回の重回帰分析のようにほどほどに独立・線形和で予想できると思う。
謝辞
おすすめのカレールーを教えてくれた人々、カレールーを開発してくれた人々、農家の方、ありがとう。これからもよろしく。
1食にかかるお金は米50円、ルー40〜20円、肉50〜100円、野菜50円ほどであり、200円程度で食べられる。本研究は、ほぼ全て自費で実験した結果であるが、2019年2月13日にAmazonほしいものリストから匿名で送ってもらった片手鍋を利用した。匿名の方、ありがとう。これからもよろしく。
参考文献