自動車は移動費を間接的にする

自分がする東京*1での娯楽はほとんど外食で、もちろん東京の外食事情は地方都市や田舎と比べて圧倒的に恵まれているものの、私は徒歩や自転車で行くことが多いので1 km圏内が多い。1 km圏内で様々な食事を楽しめるのはそれはそれで東京を活かしているのだが、それより遠い店は何年も行きたいと思っていてもなかなか行けていない。

徒歩や自転車を選ぶ理由のひとつは、電車での移動には直接お金がかかるから。地下鉄は往復で350円はかかり、約1000円の食事に追加で払うには高く感じる。私は支出が直接快楽や幸福につながって欲しいと思ってしまうので、単なる移動よりは食事にお金を使いたいと思い、近くで350円分高いものを食べてしまう。

 

自動車に乗っていると行動範囲が広がる。行ったことがなければ20 km先のロードサイドのチェーン店にも行ける。数百円で行ける明治神宮に行こうとは思わないのに、自動車に乗っていると50 km先の明治神宮と比べたら規模が百分の一くらいの神社仏閣にも行った。

もちろん自動車の移動にはガソリンは使われるし、カーシェアなら自動車自体のレンタル代もかかる。所有していたってタイヤなどの色んな部品は摩耗する。

 

自動車は移動費を間接的にする。20 km先のロードサイドのチェーン店に行ったとき、その20 km分のガソリン代をそのときに払うわけではない。摩耗した部品を20 km分交換するわけでもない*2。短絡的には移動にお金がかからないように見える。

もちろん実際にはお金がかかる。タイムズカーなら1 kmあたり20円の距離料金がかかるので往復で800円。自家用車でも最近のガソリンは175円/L程度なので、20 km/Lの燃費で20 kmの往復だと燃料代だけでちょうど350円。

それでも、その支払いが後回しであり、直接結びついていないように見えるだけで移動の心理的障壁は下がる。逆に言えば、支払いが即時的で直接結びついているように見えれば、移動の心理的障壁が上がる。

 

"合理的"に生きるなら、自動車での移動も支出を結びつけて考えるべきだと思う。タクシーのように距離や時間で料金メーターを動かすと気が散ってしまいそうだから、目的地を入れた段階でカーナビが推定燃料費を表示するシステムがいいかもしれない。高速道路の料金は出してくれるのだから、精度はともかくシステム的には容易なはず。

ただ直接結びつけて見えるようにすることで移動(費)を制限・抑制したいのではなく、他の出費の比較を容易にしたい。私は社会に対して出費して経済を回すことを求めているから、地下鉄の料金がもっと間接的になるほうがいいかもしれない*3

 

 

東京(都心)にいると家賃が高い。家賃の高さの一部は、周辺の娯楽施設の豊富さによるものだと思う。でも自分は普段周辺の娯楽施設をあまり使っていない。美術館や博物館や映画は1年に1回も行かないし、繁華街やショッピングモールにも行かない。ライブにも行かないし、そういうイベントは混雑を理由に避けるまである。

どうせ高い家賃を払っているのだから…と言うとサンクコスト効果のようだけど、永久に東京に住んでいるとも限らないし、飲食事情や物価も変わる。地下鉄で行くのが私にとって合理的かは分からないが、もう少し家から離れた飲食店や娯楽施設にも積極的に行くべきかなと思った。

 

花粉症が治まったら。

*1:自宅内を除いた都心

*2:更に言えば私が使うカーシェアは日単位での従量課金が多いので1時間追加で借りても料金は変わらない

*3:といいつつ、多くの社会人は割と地下鉄の料金は割と気軽に出している気がする。